【今日のお説教ダイジェスト】
4月26日(金)午後
石川 安樂寺 恒川學道師
讃題「二祖対面」
阿弥陀様の名を称えるだけですべての人が救われるというのが、法然上人の教えです。これを「専修念仏」といいます。専修念仏はそれまでの仏教とは大きく違う空前の教えでありましたから、その教えが果たして世の人々に正しく理解されるかどうか、不安がありました。そのために法然上人は布教をためらっておられました。
そんなある夜、法然上人は不思議な夢を見ました。上半身が墨染で下半身が金色に輝く尊げな一人の僧侶が、紫の美しい雲に乗って法然上人の近くに降りてこられました。法然上人が思わず合掌して、「どなたでございますか」と尋ねました。すると半分金色の僧侶が、「私は唐の善導です。」と答えられました。「その善導様が、どうして来られたのですか。」と尋ねますと、「あなた様が専修念仏を弘めることが尊いので来ました。」と答えられました。「そうでしたか。それは誠にありがたいことであります。」法然上人がそう答えた途端、夢から覚めました。現代人には「夢」は所詮、夢でしかありませんが、中世の日本人にとっての夢の現象は、真実だと思われておりました。
当時、仏教の各宗では、その宗の教えを師匠から弟子に伝授する方法がとられておりました。ところが法然上人の興した浄土宗は、伝教大師の天台宗や弘法大師の真言宗のように中国にわたって直接その宗の師僧からうけたものではありません。夢の中で善導大師から伝授されたものであります。それだけにこの夢における出会いは、日本の仏教ではめずらしいことでした。
法然上人はこの善導大師との夢の対面で、専修念仏の教えを広く人々に伝える決意を固め、比叡山を下ることにしました。法然上人は高い山にあった仏教を人々の近くから伝えることを決意したのであります。