令和４年5月26日、永観堂鶴寿台にて宗祖法然上人立教開宗850年記念DVD収録のための旭堂南海さんによる新作講談「法然上人ご一代記-立教開宗の巻」がお披露目されました。収録直後に聞きどころなどインタビューしました。
（聞き手：教化伝道部（以下教伝部）中川龍学）
◆旭堂南海プロフィール
昭和39年 兵庫県加古川市生まれ。
平成元年2月 故三代目旭堂南陵に入門
同年3月 大阪大学文学部(国文学専攻)卒業
平成8年 「咲くやこの花賞(大衆芸能部門)」受賞
平成21年から「加古川観光大使」を務める
古典講談本来の形である「続き読み」を続け、CD『太閤記(木下藤吉郎編)』(全40巻)、『太閤記(羽柴筑前守編)』(全36巻)、『難波戦記』(全40巻)を発売。また、侠客伝『祐天吉松』(全16話)、『浪花五人男』(全8話)等をYouTube(無料)にて公開。その他、地域の民話・伝説を講談化したり、偉人伝などの講談化も多数。得意読み物は『太閤記』『関ケ原軍記』『難波戦記』『大塩平八郎』『浪花侠客伝』『浪花五人男』『関取千両幟』など多数。
教伝部／お疲れのところ、お時間いただきましてありがとうございます。先ほど講談を聞かせていただいて、書籍や学校で習うより、人物像や人と人との繋がりがよく分かりました。法然上人にとって最初の師匠の観覚の存在が大きかったことや、黒谷の師叡空との師弟の感じなど、あ、きっとこういう会話があったに違いない、と思わせるものでした。講談師も師匠と弟子の繋がりが大切だと思いますが、もしかして南海さんの師弟感が出ていたりするんですか？
南海氏／講談師の世界の師匠はもっとキビシイです(笑) 。法然さんは観覚さんに導かれて比叡山で叡空さんに出会い、叡空さんは叡山とは真逆の考え方の円照さんを紹介したりします。それによって、法然さんの道が開けていく。お師匠さんに恵まれてますよね。史実にある人物の関係性から、実際にこんなやりとりがあったかもと想像させるのが講談ならではなんですが、お師匠さんと法然さんとの立ち位置が面白く描けたらと思いました。
教伝部／講談は歴史上の人物や出来事を語っていくことが多いと思いますが、法然上人のことを講談にしたものはあるのでしょうか？
南海氏／講談では、親鸞さん、日蓮さん、空海さんは定番みたいな感じであるんですが、法然さんはそれほどでもありません。やっぱり講談って派手な活躍の方が盛り上がるんですが、法然さんはそうじゃ無いですよね。法然上人の生涯でいちばん講談的なエピソードといえばお父さんが敵の夜討ちに遭って、幼少の法然さんが一矢報いるところ。ここは盛り上がるポイントなんですが、今回はそれもできない。
教伝部／そうですよね〜(笑、汗)
南海氏／西山派さんではお父さんが殺害される事件は法然さんが比叡山へ登ってから後という説を取られるとのことで、最初はどうしようかと思ったんですが、でも考えてみればあのエピソードって、講談的すぎるというか、逆に劇的な逸話がない方が法然さんの立教開宗の素晴らしさを描くことができるんじゃ無いかと気づいたんです。
教伝部／おお！
南海氏／盛り上がりを泣きながら蔵の中の全ての経典を読み返すところに持ってくる。それはお父さんとお母さんのことが動機になっている。そういう描き方をすれば一人の人間としての人生の感動を出せると気づきました。14歳で出家してから30年かけて見つけた揺るぎない境地。弾圧を受けても静かにくじけない人間としての根の強さ。見た目の強さとかではない本当の強さを表現できたと思います。
教伝部／ぜひ多くの人に観てほしいです！講談を聞いたことがない人も多いと思うんですが、講談の面白さってどういうところですか？
南海氏／講談は声によって視覚的な想像をさせていく芸です。聞いた人それぞれの中で人物像を作ってもらう。そのためには人物を作り込みすぎないようにしています。昔の講談師は例えば男女で声色を変えたりしなかったんですよ。それでも聞いた人の中では性別年齢性格など違ったキャラクターが動き出す。そこが落語と違うところでもあります。講談という芸はお説教から始まったという説もあるので、もしかしたらその辺り「演じすぎない」ことに関係があるのかもしれません。
教伝部／講談にますます興味が湧いてきました。南海さんの講談をもっと聞きたいと思ったらどこで観ることができますか？
南海氏／いろんなところで演じてるんですが、まずはYouTubeで「古典講談」で探してみてください。
教伝部／検索してみます！本日はありがとうございました。
◆講談「法然上人ご一代記 立教開宗の巻」（前編）
https://honen850.jp/movies/kodan-part1/
◆講談「法然上人ご一代記 立教開宗の巻」（後編）
