【Creators Interview】「寺フェス!〜この世のならひ〜」出演者・QuizKnock こうちゃん

【Creators Interview】「寺フェス!〜この世のならひ〜」出演者・QuizKnock こうちゃん

 

 

法然上人立教開宗850年記念事業にお力添えいただいた、さまざまなクリエイターのみなさんを紹介するインタビューシリーズ。第三回は、「寺フェス!〜この世のならひ〜(以下、寺フェス)」の出演者・QuizKnock こうちゃんです。

 

QuizKnockには、寺フェス期間中の10月14日、15日に境内・堂宇全体で行われた、法然上人にまつわる謎解きラリー「謎解き de QuizKnock」を制作いただきました。また、こうちゃんには大殿前ステージで行われた「Quiz de こうちゃん」に出演いただきました。

 

当日は、大殿に現れた人気YouTuber・こうちゃんと、永観堂のお坊さんたちが出すクイズを、たくさんの人たちが楽しむ姿が見られました。インタビューは全ステージ終了後に実施。寺フェスのプロデューサーを担ったお坊さん・川瀬亮俊さんと一緒に、今回のイベントの感想や歴史を紐解く面白さをお話しいただきました。

 

<プロフィール>

こうちゃん

1997年生まれ。東京大学法学部卒業。2017年より東大発の知識集団・QuizKnockの一員としてYouTube動画に出演し、Webライターとしても活動している。NHK Eテレ『クイズほぉ〜スクール』にレギュラー出演するほか、『ネプリーグ』や『Qさま!!』など多数の番組に出演し、『Qさま!!』と『潜在能力テスト』では優勝を経験。得意科目は世界史、日本史で、社会(中学・高校)の教員免許を持っている。

 

 

寺フェスにQuizKnockを呼びたかった理由

 

ーー寺フェスを開催するにあたって「ぜひQuizKnockを呼びたい」と思われたそうですね。

 

川瀬氏:宗祖法然上人の立教開宗850年を記念するイベントは、広く一般の方に参加いただけるものにしたいと考えていました。法然上人という方ご自身が、そういう考えのもとに「南無阿弥陀仏」を真ん中において仏教を開いた方だったからです。QuizKnockのみなさんは、とりわけ若い人たちへの発信力の点で、私たちが進めるプロジェクトに合致すると考えてオファーを出しました。なかでも、日本史に強いこうちゃんに来ていただきたかったんです。

 

ーーオファーを受けてどう思われましたか?

 

こうちゃん(右)と川瀬亮俊さん(左)

 

こうちゃん:まず、イベントで地方に行くのが好きなので、京都に行けることが楽しみでした。また、歴史が好きで詳しいという自負もありますから、それが仕事につながっていることも率直にうれしかったです。川瀬さんと打ち合わせをしていると、僕たちの番組を見てくださっていて。視聴者の方からオファーをもらうことも、シンプルにうれしかったですね。クイズをつくるために、京都のことを調べ直して勉強になりましたし、準備段階からワクワクしながらイベントに参加しました。

 

ーークイズをつくるにあたって、どういうことを勉強されたのですか。

 

こうちゃん:イベントに参加した人たちは、「大きく考えたらこうじゃないか?」とわからないなりに考えて正解することもあったと思います。まずは、ざっくり大枠を捉えるのが大事だと思い、「鎌倉時代ってこういう時代だったよな」「浄土宗ってどんなんだっけ?」を、いろんなサイトなどを眺めて調べました。そのうえで、参加する人たちをイメージしてどのくらいの難易度がよいかを精査しながら、クイズをつくっていった感じです。みなさんが正解して喜んだり、正解できなくて悔しがったりしながら楽しむ姿を見ると「クイズをつくってよかったな」と思いますね。

 

ーー今回は、みなさんのリアクションを直接見ることができましたね。

 

こうちゃん:ふだんは動画や記事を公開して、たとえばSNSなどを通して反応をもらいます。もちろんそれもうれしいのですが、対面だとタイムラグなくリアクションをもらえるので元気をもらえますね。

 

こうちゃんのクイズに答える参加者のみなさん。みなさんいい表情でした!

 

 

意外とイベント慣れしていたお坊さんたち

 

ーー今回、こうちゃんが出すクイズと、お坊さんたちが出すクイズがありましたね。どんなふうに相談してつくったのですか?

 

こうちゃん:僕は僕のクイズをつくり、お坊さんたちも独自につくってくれました。いろんなふうに人の心を動かすクイズをつくるのはけっこう大変なんですよ。考えがいがあって、聞いていて楽しくて、正解したいと思ってもらうために、いろんな要素を満たさないといけないんです。僕自身も大変だなと思いながらつくっているわけですが、お坊さんがつくったクイズは僕が聞いていてもワクワクしました。

 

ーーお互いのクイズは、本番まで知らない状態だったんですか。

 

川瀬氏:事前に「こういう内容でやりましょう」とすり合わせはさせていただきましたが、こうちゃんがつくるクイズはノータッチで信用していました。こちらのクイズの内容は、こうちゃんに答えてもらうことになっていたので、本人には知らせていませんでした。その方がワクワク感が伝わると思いましたし、ステージでこうちゃんが考えている仕草や表情も、みなさんは楽しみになさっているでしょうから。

 

こうちゃん:実は、最後のステージでの三択問題は正解がわからなくて、「答えられてよかったー!」と思いました。

 

川瀬氏:さすがだなと思いました。一問くらいは外してもらって「やった!」と思いたかったんですけども(笑)。

 

こうちゃん:ありあまるクイズ力でカバーしました(笑)。

 

お坊さんのクイズに答えるこうちゃん(正解発表待ち)

 

ーーお坊さんたちと一緒にステージに上がられた感想は?

 

こうちゃん:僕はクイズを出すイベントに出る機会も多いし、動画もつくっているので「自分が盛り上げなければいけないのかな」と思っていたんです。お坊さんたちは、どのくらいイベントの経験があるのかなと思っていたらめちゃくちゃ慣れていて。「え?あれ?こういう感じなんだ」と思いました(笑)。それに、川瀬さんたちと打ち合わせするなかで「このメンバーなら変に気を使わずに楽しいイベントになるんじゃないかな」と思っていました。自分もこのイベントを楽しもうという気持ちでできたのは、本当にありがたかったです。

 

 

法然さんが生きた鎌倉時代を好きな理由

 

ーー「法然上人が浄土宗を開いた」ということは、日本史でも習いますよね。それから850年を記念するイベントに参加して、「歴史のなかの法然上人像」は変わりましたか?

 

こうちゃん:むしろ、勉強したイメージに近いなと思います。日本史の授業では、鎌倉新仏教は一部の特権階級のものだった仏教をわかりやすく身近なものにしたと習いました。なかでも、法然さんは「念仏を唱えれば救われる」と言って民衆に広めたわけですよね。寺フェスは「どうしたら仏教をより身近に感じてもらえるか」を考えて企画されていて、850年前に法然さんが考えたことが、今に継承されているんじゃないかと思いました。

 

たとえば、僕は寺フェスで「臨終作法体験yorokobi zo my Life」に参加したのですが、お棺に入って枕経を体験するなんてふつうはできないじゃないですか。やってみると考えることがあるし、身近に感じるプラス、深く考えるというしかけがすごく面白かったです。

 

川瀬氏:そう言っていただけるとすごくうれしいです。

 

こうちゃん:僕は、日本史のなかでは鎌倉時代が好きなんです。貴族社会から武家社会へと変わり、仏教が民衆に開かれたものになるという、現代に通じる歴史の転換点じゃないかと思っていて。社会全体が新しいステージに進んだ感じがします。昔、試験の点数がよかったというのもあるんですけど(笑)。

 

 

ーーそもそも、こうちゃんはどうして歴史を好きになったのですか。

 

こうちゃん:小学校6年生のときの先生がすごく楽しそうに歴史を語る人で、教え方も面白かったんです。たとえばゴールデンウィークの宿題が「魏志倭人伝を渡すから、邪馬台国の場所を特定してください」だったんですよ。その先生に出会ってから歴史が好きになり、今もそのとき感じたワクワクが続いている感じです。その後も、僕が出会った歴史の先生たちはすごく楽しそうに授業する人が多くて。歴史だけではなく、ゲームでもアニメでも楽しそうに話している人がいると興味をもつじゃないですか。それと同じ感じだと思います。

 

僕の世界史の先生は「歴史を学ぶと今がわかる」と言っていました。過去から今に至る流れを学ぶと、生きている世界の解像度は上がります。全人類の一人ひとりに、生まれた国や宗教、家族などの異なるバックグラウンドがあり、心に抱いているそれぞれの感情があると知ろうとすることでやさしくなれる気がする。楽しいことも多くなるんじゃないかと思いますね。

 

 

人は常に何かの影響を受けて変化している

 

ーーこんなにお坊さんと絡むことはなかなかないと思うのですが、一緒にイベントをやってみていかがでしたか。

 

川瀬さんは、こうちゃんが「今までで一番しゃべったお坊さん」になりました。

 

こうちゃん:今回、お坊さんたちがニックネームを書いた名札をつけていたんです。川瀬さんなら野球が好きだから「日ハム和尚」とか(笑)。こういう細かい配慮は、いい方向に作用していると思いますね。よく知らないと「お坊さん」と一括りにしてしまうけれど、名札があることで「同じ人間として日々生きているんだな」「それぞれ違う感じで生きているんだな」と思いました。

 

僕と並んで壇上に立っていたのも珍しい光景だったと思います。それを見ていた人たちは、「クイズ全問正解できてよかったな」「イベント楽しかったな」「終わったらどこに行こうかな」と考えていたかもしれません。でも、同時に彼ら彼女らの脳には、我々が並んで立っていた姿が一緒に入るわけですよ。すると、今までのお坊さん像や仏教のイメージが、寺フェスで目指されていたように「身近に感じる」に一歩近づくのではないかと思います。

 

今回の寺フェスで知ったこと、感じたことはきっと将来的に何かにつながっていると思うんです。遠い人生のなかでプラスの影響があるかもしれないですよね。何ごとも「何かの役に立つからやる」ではなくて、シンプルにそのときの感情を一番大事にして行動したらいいのかなと思っていて。たとえば、日々の僕は人間的に楽しさや利益を求めて生きています。その瞬間を楽しんでいることが、自分の気づかないうちに糧になっていくのがいいんじゃないかと僕は思っています。

 

ーーお話を伺っていて、「楽しかった」と心が動く経験が、無意識のうちに自分のどこかに作用することを大事に考えておられるのかなと思いました。

 

こうちゃん:人は常に何かの影響を受けているんですよ。たとえば、おととい京都に来てホテルに泊まった段階の僕と、二日間のイベントを終えた今の僕は、たぶん頭の中でちょっとした思考の変化があるんですね。表には現れていない部分で、自分を構成する要素が増えているかもしれません。僕は、いろんなことに触れて、経験したほうが楽しいし、人生の彩りを豊かにすると思っています。何が自分の人生をつくるのかわからないからこそ、いろんなことをして楽しく生きるのがいい。「楽しい」ということはきっと気づかないうちに糧になっていくので、「何の役に立つのか」と考えすぎずに、単純に行動したらいいのかなと僕は思っています。

 

ーーありがとうございます。これからも動画など拝見させていただきます。

 

(取材・文・撮影、杉本恭子)