〇〇は断ち切れない!?

 朝、車のエンジンをかけると、カーナビが「今日は〇月〇日、〇〇の日です」とプチ情報を教えてくれます。毎日いろんな記念日があるもんだなと感心してしまいます。

 

 さて、もうすぐ日本中の僧侶が羨むクリスマスがやってきます。悲しいかな、仏事(仏教行事)は死のイメージが強く、あまり皆でワイワイとするものでもないために、なかなか大衆化しません。しかしいつまでもへそを曲げていてはダメなのです。今ではお寺で堂々と開き直ってハロウィンやクリスマスのイベントをする時代なのです。「あれ?ところでお釈迦様の誕生日っていつだっけ?」と思われたあなた、さぁ「お釈迦様 誕生日」で検索です。

 

 とはいえ、クリスマスが終わるといよいよ仏教の出番、除夜の鐘です。一年の締めくくり大晦日に、各寺院で梵鐘といわれる大鐘を108回叩く行事です。諸説ありますが、108の数字は煩悩(ぼんのう)の数で、梵鐘を叩くことで煩悩を断ち切り、心新たに新年を迎えようというものです。

 修行僧が煩悩を断ちきり、悟りを求める思いで行ってきた行事の意義を否定するつもりは毛頭ありませんが、着目すべきは「煩悩は断ち切れない」ということです。煩悩とは自分を苦しめる原因になるようなもの、例えば「あれが欲しい、これも欲しい」とか「〇〇さんに好かれたい」などの欲望や欲求、もしくは「〇〇さんは嫌い」「あなたは許さない」といった怒りや恨みのようなものです。「あ~それを無くすのは無理そうだな」と思われたあなたは正しいのです。実はそのことを一番自覚していたのが法然上人であったといえます。そして煩悩にまみれた愚かな人間でも救われる道を求めて、出会ったのがお念仏の教えでした。徹底的にこの煩悩に向き合ったことが、「浄土宗」立教開宗に繋がっていったと言っても過言ではありません。

 

私たちも一年の締めくくりのこの日には、断ち切れない煩悩にしっかりと向き合い、至らない自分自身を見つめ直す、そしてこんな私を生かせている自分を取り巻く一切の人々や物事に感謝の気持ちで掌を合わせる日にしたいものです。