5 諸国遊学

24歳の時、嵯峨清涼寺の釈迦堂に七日間籠ったのをきっかけに、各地の高名なお坊さんに教えを請う旅に出ました。華厳、法相、真言、禅など各宗派の教えを極めたと高名なお坊さんたちに会い、すべての人が救われる道を探し求める旅でした。
法然上人は43歳まで諸国をめぐり求道の旅を続けましたが、この間都では、それまでの貴族中心から新しく武士たちが政治の実権を握る世の中に大きく変わった時代でした。政治の混乱と共に、戦乱と大火がたくさんの人の命を奪い、埋葬されない遺体が河原にあふれているような時もありました。人々はこころの救済を求めましたが、肝心の宗教界でも諸勢力の武力による争いが絶えない時代でした。法然上人は旅の途中、さまざまな地獄のような光景を目にしたに違いありません。「すべての人が救われる教えはどこにあるのか」それを示してくれる師には未だ出会えません。