【コンセプト】
私たちが「Pure Land Lights」をしようと思った理由。
「Pure Land Lights」とは「浄土の光」という意味です。法然上人立教開宗850年に最新の技術を使って光の浄土・曼陀羅(まんだら)を総本山永観堂に映しだし、宗祖に供養し立教開宗を寿ぎたいと思いました。
時代は転換期を迎えています。気候変動、政治の混乱、疫病の蔓延、人心の荒廃、戦争。法然上人が体験したであろう時代の激動を今私たちは世界規模で目撃しています。今こそ、法然上人の教えが世界の混乱から抜け出る糸口となるかもしれない。宗派の人たちだけでなく、広く法然上人のことを知ってもらうことが立教開宗850年の今私たちのするべきことだと思いました。
でも難しいことを難しい顔で伝えても敬遠されるだけです。伝統的な法話や法要では若い人たちには響かないでしょう。そのために「プロジェクションマッピング」をしてみようと思いました。「プロジェクションマッピング」ならばその場に身を置くことで感覚的に「浄土」や「お念仏」や「他力」といった法然上人の思想を「感じて」もらえる場を作れるかもしれない。
この試みは当麻曼陀羅(たいままんだら)極楽の様相を描いた曼陀羅図を教学(きょうがく)の一つとして大切にしてきた私たちの宗派ならではの意義があると考えます。浄土教はもともと、文字も読めない人たちに仏教の素晴らしさを直感的に伝えられるところに独自性がありました。850年前は画材を使って曼荼羅や『山越え(やまごえ)の阿弥陀図』を描きましたが、現代においては光を使って「中に入れる」「体感できる」浄土変相図(じょうどへんそうず)を作り出せるのでは、と考えました。プロジェクションマッピングはすでに各地で行われており、珍しくもないイベントと思われると思いますが、私たちが作ろうとしているのはマッピングという最新の技術を使った「光の曼陀羅」「光の浄土」の創造であり、新たな宗教行事です。
この特別夜間拝観「Pure Land Lights」の中では、池の上のマッピングで、また創作能の劇中で、そして法然上人の御影堂(みえいどう)で、僧侶たちによる礼讃(らいさん)の読経・お念仏が響き渡ります。それらは葬儀や法要の中で聞くお経とはまた違ったものに聞こえると思います。その体験は、参拝する人たちにとっても、それを称える僧侶たちにとっても新鮮な体験となることと思います。そこから次の時代の何かが生まれるかもしれない。法然上人の立教開宗から850年。浄土の教えの新しい表現を模索します。
■試写映像